開発・販売する際に、対象者の年齢によって気を付けなければならないポイントがいくつかあります。
今回は子どもを対象とする場合に気を付けるべき調味料開発のポイントを解説します。
幼児、小学校低学年・高学年、中高生、大人と、年齢によって味覚や嗜好は変わっていきます。例えば販売の対象を子どもとし、調味料を開発する場合に、どのような点に注意しなければならないでしょうか?
今回は、子どもの味覚の特徴を踏まえたうえで、調味料開発のポイントを紹介します。
目次
大人と子どもの味覚の違い
人の舌には「味蕾」という味覚センサーがついています。生後3か月あたりのピーク時まで味蕾は増えつづけますが、5か月くらいになると数はそのままで味を感じとる機能はにぶくなっていきます。
味蕾は刺激や喫煙などで摩耗し、生まれたばかりの赤ちゃんが1万個もの味蕾をもつ一方で、成人すると約7千個ほどまで減っていきます。
つまり、大人よりも子どもの方が味覚を感知していると言えます。
子どもにとっての「味」
①味蕾とは?
味蕾は、五感のひとつ「味覚」を受容します。味蕾に食べ物がふれると神経から味覚情報が脳に伝わり、においや見た目などの情報と組み合わせて味として認識されます。
②味蕾で感じる5つの味覚
味覚は、「甘味」「苦味」「塩味」「酸味」「うま味」の5つの種類で構成されていて、食べ物のおいしさを決める要素としての役割を持ちます。
味覚には、その食べ物が有益なものか、有害なものかを知らせる役割があります。
甘味・塩味・旨味は、生きるために必要な栄養素であると知らせるため、自然にその食べ物を好むようになります。
しかし、苦味や酸味は、からだによくないものを知らせます。つまり、子どもがお菓子やファストフードを好み、野菜や酢の物を嫌うのは、遺伝的に組み込まれた要素なのです。
③味覚の変化
多くの毒物には苦みがあり、人間は本能的に苦みを嫌います。しかし、たくさんの食事経験を積み重ねることで、徐々に味に慣れてきて「味」の一種として楽しめるようになるのです。
④子どもに辛さは危険!
辛さとは「甘味」「苦味」「塩味」「酸味」「うま味」の五味に含まれない、単なる「痛み」なのです。また、子供の胃や腸は未熟なため、辛い物を食べた時に体調が悪くなり好き嫌いをするようになることや、本人が欲しがって与えたのに後々体調を崩すことなどがあります。
調味料開発の3つのポイント
ここまでは、子どもと大人では味覚・嗜好が違うことを解説しました。それを踏まえて、子どもを対象とした調味料を開発・販売する上で気を付けなければならないポイント解説していきます。
①味付けの濃さ、辛さに気を付けましょう。
これまでもお伝えした通り、子どもは大人よりも味覚が鋭く、また、幼少期にこれからの人生における味覚が形成されていきます。
味覚を発達させるためにも薄味を心がけましょう。
また辛味は子供にとっては刺激が強いので使用は控えましょう。
②固形物の大きさは年齢を考慮しましょう。
子どもによっても、年齢によって食べやすい大きさは変わっていきます。
小さな子供はのどが狭く、飲み込んだり吐き出したりする力が弱いため、口に入れた物でのどを詰まらせてしまう可能性があります。
対象年齢に合わせて、ペースト状にしたり、細かい形状にしたり、誤嚥(ごえん)防止のために工夫する必要があります。
③子どもたちの食育を意識しましょう。
幼少期の食事は楽しいことが重要です。食べることは生きる基本です。
「食事=楽しいこと」を幼少期に体験することは今後の生活に大きく関わっていきます。
味覚以外にも匂い、歯ごたえ、見た目も大切です。
また、「親子で一緒に料理をする」等、子どもの食体験をテーマに開発しても食育に繋がります。
辛い料理を子供向けの味付けにする方法とは?
今回は麻婆豆腐を例に解説をしていきます。
麻婆豆腐には一般的には香辛料として、にんにくや生姜、豆板醤等を使用します。
この中でも子供に与える際に特に注意したいのが豆板醬に含まれる唐辛子です。
唐辛子に含まれるカプサイシンは食べることだけでなく、触ることにも注意が必要な物質です。
子供、特に乳幼児は食事の際、手を使って食べることがありますが、子供がカプサイシン入りの食べ物を触った手で口や目をこすると、カプサイシンが体に付着して痛みを感じます。
子供にとって辛い物は、痛みを与える刺激物。
子供の場合は体が未発達ですので大人とは異なるので注意が必要です。
では、これらを踏まえると麻婆豆腐の味付けは、どのようなことに注意すれば良いでしょうか?
辛い調味料の量を減らすこと以外にも、調理過程を工夫することで子供向きに辛さを調節した料理を作ることができます。
①辛味の使用について
辛味の強い調味料の使用は、子ども向けの味付けには控えましょう。
にんにくや生姜等の香味野菜も実は子供にとっては刺激が強く、使用する量に注意が必要ですが、香りやうま味もあるので使用するメリットもあります。
②香味野菜のメリットを最小限で利用する
そこでおすすめなのが、香りづけ程度に調理に使う方法です。
にんにく、生姜は食材の臭みを消す効果があるので、味付けとしてではなく、臭み消しを目的として少量だけ使用しましょう。
例えば生姜汁は加熱すると香りが飛びやすいですが、この効果を利用し香りや辛味を抑えつつ、臭み消しを目的として使用しましょう。
この方法は他の料理にも応用ができるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
味付けや固形物の形状の工夫を踏まえて食育面にも考慮した商品は、保育施設の業務用調味料や忙しい現代社会の家庭の調理にも役立つのではないでしょうか。
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<参考文献>
・「食を通じた子どもの健全育成(-いわゆる「食育」の視点から-)の
あり方に関する検討会」報告書について
・農林水産省(カプサイシンに関する情報)
(https://haisha-yoyaku.jp/docs/hamigakids/column/child-taste-buds.html)
・子どもの好き嫌いを克服!「味蕾(みらい)」を育てる食べさせ方
(https://haisha-yoyaku.jp/docs/hamigakids/column/child-taste-buds.html)